鍼治療で神経を傷つけることはある?神経損傷のリスクと安全性を鍼灸師が解説

こんにちは。【所沢肩こり腰痛マッサージ鍼灸院】 鍼灸師の熊谷です。→熊谷陸の経歴・実績はこちら
鍼治療を検討している方の中には、
「鍼が神経に当たることはないの?」
「神経を傷つけて、しびれが残ることはある?」
「施術中に電気が走るような感覚があっても大丈夫?」
と不安を感じる方もいらっしゃると思います。
結論からお伝えすると、適切な知識と技術に基づいて鍼治療を行った場合、神経損傷が起こる可能性は高くありません。
ただし、身体へ鍼を刺す施術である以上、神経損傷の可能性を完全にゼロと言い切ることはできません。
この記事では、鍼治療で神経を損傷する可能性や、施術中に神経へ近づいたときの感覚、施術後に注意したい症状、安全に施術を受けるためのポイントについて鍼灸師が分かりやすく解説します。

目次
鍼治療で神経を損傷することはある?

鍼治療による神経損傷はまれですが、起こる可能性がまったくないわけではありません。
全日本鍼灸学会の「鍼灸安全対策ガイドライン2025年版」でも、刺鍼による臓器や神経の損傷を防ぐため、施術者は局所解剖と安全な刺入深度を十分に理解し、不必要に深く刺すことや粗雑な手技を避ける必要があるとされています。
一般的な鍼治療では、直径0.16〜0.20mm前後の細い鍼が多く使用されます。
注射針と比べて細く、先端の形状も異なるため、適切に施術を行えば神経へ重大な損傷を与える可能性は高くありません。
しかし、鍼が細いからといって、神経損傷が絶対に起こらないわけではありません。
神経の近くへ不必要に深く鍼を刺した場合や、強く乱暴に鍼を動かした場合、お客様が置鍼中に大きく身体を動かした場合などには、神経を刺激したり傷つけたりする可能性があります。
鍼は神経を自然に避けるの?
「鍼は細くて柔らかいため、神経に当たっても自然に避ける」と説明されることがありますが、必ず神経を避けて進むわけではありません。
筋肉や皮下組織、血管、神経などの位置には個人差があります。また、身体の外側から細かな神経の位置をすべて目で確認することはできません。
そのため、安全な施術を行うには、鍼の柔軟性だけに頼るのではなく、施術者が解剖学的な位置関係を理解し、施術部位に応じて鍼の方向や深さを調整することが重要です。
特に首、鎖骨周辺、脇、肘、手首、お尻、膝の裏などには、重要な神経や血管が走行している場所があります。
こうした部位では、患者様の体格や筋肉の厚さも確認しながら、より慎重に施術を行う必要があります。
鍼が神経の近くに触れると、どのように感じる?
鍼が神経やその周辺を強く刺激すると、次のような感覚が現れる場合があります。
・腕や脚へ電気が走るような感覚
・指先や足先まで響くような感覚
・鋭く突き抜けるような痛み
・ビリッとした強いしびれ
・鍼を刺した場所とは離れたところまで広がる痛み
鍼治療では、重い、だるい、ズーンと響くような独特の感覚が現れることがあります。これは一般的に「得気」や「響き」と呼ばれます。
通常の響きは、筋肉の奥に重さや圧迫感を感じることが多く、必ずしも危険な反応ではありません。
一方で、鋭い電撃痛や強いしびれが指先・足先まで走った場合は、神経の近くを刺激している可能性があります。
その場合は我慢せず、その場ですぐに鍼灸師へお伝えください。
施術者が鍼の位置や深さを調整したり、鍼を抜いたりすることで、刺激を軽減できます。
鍼を刺した瞬間にしびれたら、神経を損傷している?
鍼を刺した瞬間に一時的な電気感やしびれを感じたからといって、必ず神経が損傷しているわけではありません。
神経の近くが一時的に刺激されただけであれば、鍼の位置を調整することで感覚が消えることがあります。
ただし、次のような症状が施術後も続く場合は注意が必要です。
・強いしびれが続いている
・触った感覚が鈍い
・腕や脚に力が入りにくい
・指や足首を動かしにくい
・痛みやしびれが時間とともに強くなる
・施術前にはなかった症状が広がっている
このような症状がある場合は、施術を受けた鍼灸院へ早めに連絡してください。
お客様によっては、好転反応による一時的なだるさや動かしづらさを感じる場合もございます。
症状が強い場合や筋力低下、感覚障害などがみられる場合は、整形外科や脳神経内科などの医療機関での診察が必要になることがあります。
→鍼灸後に起こる好転反応についてはこちら
神経損傷と鍼の「響き」はどう違う?
鍼治療で現れる響きと、神経への強い刺激は感覚が似ている場合があります。
一般的には、次のような違いが目安になります。
鍼の響きとしてみられやすい感覚
・鍼の周辺が重く感じる
・筋肉の奥にズーンと響く
・押されているような感覚がある
・刺激を緩めると落ち着く
・施術後に長時間残らない
神経への強い刺激が疑われる感覚
・鋭い電気が走るように感じる
・指先や足先まで一気にしびれる
・焼けるような痛みがある
・筋肉に力が入りにくくなる
・鍼を調整したあとも強い感覚が続く
ただし、ご自身で完全に見分ける必要はありません。
施術中に「いつもの筋肉の響きとは違う」「怖いほど強い」「電気が走る」と感じた場合は、すぐに鍼灸師へ伝えることが最も大切です。
鍼治療の主なリスクとは?
鍼治療は、適切な方法で行えば比較的安全性の高い施術ですが、身体へ鍼を刺す以上、一定のリスクがあります。
主に次のような反応や有害事象が挙げられます。
出血・内出血
鍼先が細かな血管に触れると、少量の出血や内出血が起こることがあります。
多くは一時的なものですが、血液を固まりにくくする薬を服用している方などは、出血しやすくなる場合があります。
刺した場所の痛み
鍼を刺した場所に、施術後しばらく痛みや筋肉痛のような感覚が残る場合があります。
多くは時間の経過とともに軽減しますが、痛みが強くなる場合や長期間続く場合は、施術を受けた鍼灸院へご相談ください。
だるさ・眠気・めまい
施術後に、だるさ、眠気、ふらつきなどを感じる場合があります。
これらは鍼治療後の一時的な反応として「好転反応」と呼ばれることもありますが、施術後に起こるすべての不調が好転反応とは限りません。
症状が強い場合や長く続く場合は、無理をせず鍼灸院へご相談ください。
気胸
胸や背中、首、肩周辺へ鍼を深く刺した場合、非常にまれですが肺を傷つけ、気胸を起こす可能性があります。
気胸を防ぐためには、肺の位置や施術部位ごとの安全な深さを理解し、不必要な深刺を避けることが重要です。全日本鍼灸学会の安全対策ガイドラインでも、臓器損傷を防ぐために局所解剖と安全深度を理解する必要性が示されています。
施術後に強い胸の痛み、息苦しさ、呼吸時の痛み、急なせきなどが現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
感染
不衛生な鍼や施術環境を使用した場合には、感染を起こす可能性があります。
厚生労働省は、施術に使用する鍼や鍼管について、ディスポーザブル、つまり使い捨ての製品を使用することが最も望ましいと示しています。
当院では、お客様ごとに新しい使い捨て鍼を開封して使用し、使用後は再利用せず適切に廃棄しています。
鍼灸治療にはリスクがない?

鍼灸治療は、薬を服用する治療とは異なりますが、「自然治癒力を利用するからリスクがない」というわけではありません。
どのような施術でも、身体へ刺激を加える以上、望ましくない反応が起こる可能性はあります。
大切なのは、リスクを必要以上に怖がることでも、まったくないものとして扱うことでもありません。
起こり得るリスクを施術者が正しく理解し、身体の状態に応じて鍼の太さ、深さ、方向、刺激量を調整することが重要です。
お客様側でも、既往歴や服用中の薬、手術歴、妊娠の可能性などを事前に伝えていただくことで、より安全な施術につながります。
日本の鍼と中国鍼では神経損傷のリスクが違う?
一般的に、日本式の鍼治療では比較的細い鍼が使用されることが多く、中国式の鍼治療ではやや太い鍼や長い鍼が使用される場合があります。
ただし、鍼の太さだけで施術の安全性が決まるわけではありません。
細い鍼であっても、解剖学的に危険な方向へ深く刺せばリスクがあります。一方、比較的太い鍼であっても、施術部位や目的に応じて適切に使用すれば、安全に施術できる場合があります。
重要なのは、
・施術部位の解剖を理解していること
・患者様の体格に合わせて深さを調整すること
・必要以上に深く刺さないこと
・強く粗雑な手技を避けること
・施術中の患者様の感覚を確認すること
です。
使用する鍼の種類だけでなく、施術者がどのように安全管理を行っているかを確認することが大切です。
鍼灸師は神経の位置をどのように確認している?
鍼灸師は国家資格を取得する過程で、解剖学、生理学、病理学、臨床医学などを学びます。
施術では、骨や筋肉などの身体の目印を触診し、神経や血管、肺などの位置を考慮しながら鍼を刺す方向と深さを判断します。
ただし、同じ場所であっても、筋肉の厚さや脂肪の量、骨格、神経や血管の走行には個人差があります。
そのため、教科書上の位置だけで判断するのではなく、お客様の体格や姿勢、症状、手術歴などを確認したうえで施術する必要があります。
特に神経や重要な臓器が近い部位では、深く刺すことだけが効果的な施術ではありません。
必要以上の深さを避け、その方に適した刺激量を選ぶことが安全性につながります。
鍼治療中に身体を動かしてはいけない理由
鍼を刺したまま一定時間置く「置鍼」を行っている間に、大きく身体を動かすと、鍼が予定していた位置より深く入ったり、鍼の向きが変わったりする可能性があります。
全日本鍼灸学会の安全対策ガイドラインでも、置鍼中に鍼が深部へ進入する可能性があるため、鍼の上にタオルや毛布などをかけないよう注意が示されています。
施術中にせきやくしゃみが出そうな場合、体勢がつらい場合、身体を動かしたい場合は、動く前に鍼灸師へ声をかけてください。
また、施術者がその場を離れず、患者様の状態を確認できる環境を整えることも重要です。
鍼治療を受ける前に伝えておきたいこと
安全に鍼治療を受けるため、次のようなことがある場合は施術前にお伝えください。
・手術を受けたことがある
・人工関節や体内金属が入っている
・血液をサラサラにする薬を服用している
・出血しやすい病気がある
・糖尿病などで傷が治りにくい
・感染症や皮膚の炎症がある
・妊娠中、または妊娠の可能性がある
・ペースメーカーなどの医療機器を使用している
・過去の鍼治療で強い痛みやしびれが出た
・現在、原因不明のしびれや筋力低下がある
また、すでに手足のしびれや筋力低下がある場合は、その症状が鍼治療前から存在していたことを伝えることも重要です。
症状によっては鍼灸施術を行う前に、医療機関での検査や診断を優先する場合があります。
鍼治療後に医療機関を受診したほうがよい症状
鍼治療後に次のような症状が現れた場合は、施術を受けた鍼灸院へ連絡するとともに、必要に応じて医療機関を受診してください。
・しびれや痛みが時間とともに強くなる
・手や足に力が入りにくい
・指や足首をうまく動かせない
・触った感覚が明らかに鈍い
・排尿や排便に異常がある
・歩きにくさが急に現れた
・強い胸痛や息苦しさがある
・発熱や施術部位の強い腫れがある
特に、筋力低下、広範囲の感覚障害、歩行障害、排尿・排便障害などがある場合は、単なる鍼治療後の反応として様子を見ず、早めに医療機関へ相談することが大切です。
鍼治療の安全性に関するよくある質問
鍼が神経に当たると必ず後遺症が残りますか?
一時的に神経の近くを刺激しただけであれば、必ず後遺症が残るわけではありません。
ただし、強いしびれ、感覚低下、筋力低下などが施術後も続く場合は、早めに施術した鍼灸院や医療機関へ相談してください。
鍼治療後のしびれは好転反応ですか?
鍼治療後の軽いだるさや眠気などは、一時的な反応として好転反応と呼ばれる場合があります。
一方で、新たに生じた強いしびれや筋力低下を、安易に好転反応と判断するべきではありません。
しびれが強い、広がっている、力が入りにくいといった場合は、施術した鍼灸院へ連絡してください。
太い鍼ほど神経損傷のリスクは高いですか?
鍼の太さはリスクに関係する要素の一つですが、太さだけで安全性が決まるわけではありません。
施術する場所、刺す方向、深さ、手技、患者様の体格などを総合的に考える必要があります。
国家資格を持つ鍼灸師なら絶対に安全ですか?
国家資格を持つ鍼灸師は、解剖学や生理学、臨床医学、衛生学などを学んでいます。
ただし、資格があるから事故が絶対に起こらないということではありません。
資格に加えて、丁寧な問診、身体の評価、衛生管理、安全な刺入深度への理解、施術中の確認などが大切です。
まとめ
鍼治療による神経損傷はまれですが、起こる可能性を完全にゼロとは言い切れません。
鍼が細く柔らかいからといって、必ず神経を自然に避けて進むわけではありません。安全に施術を行うためには、鍼灸師が身体の解剖や神経の走行、安全な刺入深度を理解し、不必要な深刺や強く粗雑な手技を避けることが重要です。
施術中に、電気が走るような強い痛みや指先・足先まで広がるしびれを感じた場合は、我慢せずその場で鍼灸師へお伝えください。
また、施術後も強いしびれが続く、感覚が鈍い、腕や脚に力が入りにくいといった症状がある場合は、施術を受けた鍼灸院へ連絡し、必要に応じて医療機関を受診してください。
所沢肩こり腰痛マッサージ鍼灸院では、症状のある場所へただ鍼を刺すのではなく、問診、姿勢・動作の評価、身体の状態を確認したうえで、鍼の位置、方向、深さ、刺激量を調整しています。
また、すべての施術に滅菌済みの使い捨て鍼を使用し、お客様が安心して施術を受けられる環境づくりに努めています。
鍼治療による神経への影響や安全性について不安なことがございましたら、施術前にお気軽にご相談ください。
【所沢肩こり腰痛マッサージ鍼灸院】鍼灸マッサージ師 熊谷 陸
この記事を書いた人
あん摩マッサージ指圧師免許証(国家資格 厚生労働大臣認定 第146112号)
はり師免許証(国家資格 厚生労働大臣認定 184484号)
きゅう師免許証(国家資格 厚生労働大臣認定 第184295号)
公益社団法人 日本鍼灸師会 会員
公益社団法人 埼玉県鍼灸師会 会員
所沢市鍼灸師会 会員
サウナマイスター
習字 2段
書記 2段
空手 茶色帯
◯実績
FCバルセロナアカデミートレーナー帯同
MLBロサンゼルス・エンゼルス研修
ZUMBAカンファレンストレーナー帯同
東急スポーツサッカートレーナー帯同
おこしやす京都トレーナー帯同
社会人野球部トレーナー研修
都内鍼灸接骨院にて院長